保育士さんからのお悩みの中でも
「小学校に上がるまでにどうにか身につけたい力」
「保護者に伝えておきたい」
「小学校の先生との連携がうまくいかない」
といった、就学に関するお悩みは尽きません。
もしかすると…
我が子の参観日や行事の際に卒園児の不遇な状態を目にし、
心を痛めた経験がある方もいらっしゃることでしょう。
「そんなこと、年明けたことまでは考えないようにしている」
という方もいらっしゃるかもしれませんが、それでは
時すでに遅し!
まだまだ半年以上の期間がある今だからこそ考えておきたい
「就学に対する不安」を今回は取り上げていきます。
尽きない悩みと、出てこない解決策
保育士さんのお話を聞いていると、
小学校に上がって心配なことの例としては
- □学校の先生の話を聞くことができないのでは?
- □授業中に勝手に立ち歩いてしまうのでは?
- □休み時間が終わっても、遊び続けてしまうのでは?
- □給食時間に食べ終わらなくて、辛い思いをしてしまうのでは?
- □集団行動がとれないのでは?
などが挙がってきます。
この心配事、10年前と同じ。
ということは、まさかありませんか??
同じことに悩んでいるのだとしたら、
それは自分たちの保育が成長していない証拠…
さらにそんな心配から
「小学校に上がって困らないように」
という気持ちがどんどん大きくなり、
1月?3月の間になんとか子どもを小学校向けに
仕上げていこうと、無理をしている年長担任。
それを、可哀想だとか、今さら遅いだとか、
他人事のように囁く同僚。}
5歳児の担任は毎年変わるから、今年の年長は
そんなギスギスした園にならないために
何かしら手立てを考えながら、手立てを実行してみて、
少しずつ保育園の技術をあげていきましょう。
でも、ちょっと冷静に考えてみましょう。子どもにとって、「学校は全て」でしょうか?
この図のように、確かに学校という新しい場所での生活時間は長く、
子どもにとっても大きな存在ではあります。
しかしながら、子どもにとっては
「家庭」や
「学童(放課後児童クラブ)」や
「遊び」「習い事」など、
別の世界がしっかりとあります。
家庭がそのことを忘れてしまうと
◯おうちでの話題が「学校」だけになってしまう
◯学童・遊び・習い事など、子どもにとっては
とても大きな存在のものが見えなくなってしまう
◯家庭の役割が、学校に行かせることだけになってしまう
といったことが起きてきます。
そして、子どもも「学校が全て」と思うようになり、
「勉強ができないから、僕はダメなんだ」
「あの子みたいにできない」などの、
消極的な気持ちになってしまいます。
●学校が全て!にならないように、保育園ができること
重複しますが、保育園ではたくさんの専門家が子どもを見守り、
保護者との情報交換(時には指導)を行なっています。
しかし、学校ではそうはいきません。
それは学校の先生の問題でなく、
子どもの成長によって変化して当然のことですし、
仕組み上仕方がないことでもあります。
これは、2歳から3歳で、
保育士の配置基準が変わることと同じことなのです。
だからこそ、保育園としてできることは保護者が
1・家庭の役割を認識し
2・学校はその子の一部ではあるけれど全部ではないと考え
3・子どもを観て、関わって、説明できる力
を育んでいくことだと考えます。
小学校に上がると、子ども半分の世界が見えなくなる。
ということを理解した上で、保育者は「家庭」としっかりつながり、
子どもの一生を見据えて子どもと生活をしていく
「家庭」をサポートしていきたいものですね。
そして、学校が占めている部分は、いずれ
「会社」や「仕事」に変化していきます。
それでも、「家庭」という部分は一生変わることはないのです。
どんな家庭であっても、その子にとっては、
取って替えることはできません。
母親の養育能力が低かろうが、
生活に困窮据える経済状況だろうが、
暴力で教育を完結するような父親だろうが、
その子にとっては「親」であり「家庭」であり、価値観が作られていきます。
だからこそ、子どもたちに対する保育園の役割はとても大きいのです。
保育園の限界もどこかでわかりながら、
自ら考え、自分の幸せのために行動できる、主体性を育む
ことも、大きな使命です。
あるのは、家庭で育むべき力ではなく、
『その子が生きていくために必要な力やスキル』だけです。
就学に向けて時間がある時期。
年長児の保育者だけでなく「園の子ども」として
一人一人を捉え直し、中期的な計画を立てて、
「保護者と子どもへの就学に向けた支援」を考えていきましょう。
是非「学校に行って困らないように」ではなく
「この子が人生を生きていくために」という視点で、
考えていただきたいな?と思います。
2021.06.18 がじゅまる学習塾