私たちは、子どもたちの知的や精神の発達状況を判断するときに、
その子が発する言葉から、理解できているかどうかを基準にしています。
発達に遅れがあると、真っ先に発達障がいを疑うことが多いのではないでしょうか。
しかし、環境やその子自身の性格、苦手意識、価値観など、さまざまな要因が、子どもたちの発達に影響を与えています。
保育現場で、子どもたちが豊かな言葉を獲得し、それをアウトプットできる環境作りや言葉かけができているのか、を改めて見なおしていきましょう。
今回は、
- 保育現場においての言葉の役割
- 発達の課題について
- 具体的な観察ポイントと事例
3つに分けて理解を深めていきます。
まず、「①保育現場においての言葉の役割」についてです。
子どもたちが言葉を獲得していく過程では、
生活の中の音や、周りの人の言葉、声を聞くという経験で、インプットをしていきます。
その後に、自分が発した言葉と周囲の反応を見ながら、
言葉と認知を結びつけ、言葉を獲得していきます。
保育士は、子どもが生きていく中で身につけていくべきことを日常生活の中で伝えていきます。
つまり、私たちが普段使っている言葉やバリエーションがそのまま子どもたちに影響を与えているということになります。
具体的に、保育園の場面に置き換えて考えてみましょう。
お散歩の時に、「今日の散歩、楽しかったですね」と先生が言ってしまうと、
子どもの中にある「虫が足にくっついて不快だった」気持ちや、
「たくさんの色のお花があってきれいだった」という感情。
さまざまな意見や感じ方、全ての感情が、「楽しかった」でまとめられてしまいます。
一方で、「どうだった?」と聞くことで、
子どもたちが自分自身の気持ちに気がつき、アウトプットの機会が生まれます。
このように、保育の工夫次第で子どもたちが言葉を豊かに使えるような経験や環境を作ることができます。
しかし、このようなことを行っていないにもかかわらず、
子どもの言葉が一方的、単一的であるから、発達障がいの可能性がある。
言葉が乏しいのはYouTubeの見過ぎが原因である。と、判断・誤解されがちです。
子どもの発達の遅れの原因が、
環境なのか、その子自身が持って生まれたもの(発達障がい)なのかを、
正しく判断して、適切な対応に繋げていきたいものです。
次に、「②発達の課題」についてです。
この「課題」という言葉に似た言葉で、「問題」という言葉があります。
問題というのは、あることに対しての不安や心配がある状態のことです。
この問題を解決するために、やるべきことが「課題」です。
保育現場で問題・課題の言葉を使うときに、
状況や環境、対象によって、問題・課題になる場合と、ならない場合があることを抑えておきましょう。
例えば、Sちゃんは、寝る時間も起きる時間も日によってバラバラな生活を送っています。
Sちゃんが保育園に通っていて保育園で生活をしている場合は、問題になります。
一方で、Sちゃんの両親がお家で仕事をしていて保育園に通っていない場合、問題にはなりません。
このように、状況や環境、対象によって、問題・課題になる場合と、ならない場合があります。
コロナ禍で両親の働き方や、家計の経済状況によって、さまざまな変化の中で過ごしています。
つまり、今までの保育の当たり前が当たり前ではなくなっており、
子どもたちの生活は、保護者の生活スタイルによって変化しています。
そのときに、子どもの発達に重点を置き、何が大切なのかを、しっかりと保護者に伝えることも保育士の役目ですので、
問題・課題になる場合と、ならない場合の判断を適切に行なってほしいと思います。
最後に、「③具体的な観察ポイントと事例」についてです。
子どもの「発達の課題」を考える時に、上記にもあるインプットとアウトプットが
大切になってきます。
具体的にいうと、インプットに視点を置いて考えるときには、
・子どもたちが何を聞いているのか。
・何に触れたのか。
・何を試したのか。
・何を考えているかを、よく観察することが大切です。
さらに、子どもたちのアウトプット(言葉として出る)を観るときに、
・認知がどう育っているか?(自分が見たものをどう認知して判断しているか)
・人に伝えるための体力。
・口がうまく使えるか?かどうか
・ワーキングメモリ(記憶力)があるかどうか。
・緊張しやすい性格。
・相手や自分に対しての信頼。
・今まで生きてきた中で、積み重ねてきた経験や価値観。を、よく観察することが大切です。
そして、さまざまな状態が影響しあって、
「上手く言葉にできない」状態になっていることを、まず理解しましょう。
つまり、上手く言葉にできないからと言って、発達障がいと決めつけてしまう前に、
子どもたちのさまざまな側面を理解し、観察することで、
なぜ「上手く言葉にできない」状態になっているのかを考えます。
そして、どのように対応することで、
この子の不足している部分を成長させることができるのか対応を組み立てていきましょう。
例えば、緊張しやすい性格が原因で、相手に自分の考えや思いを伝えることが苦手な子には、
大人数の前ではなく信頼している先生と1対1で話す場面を多く作ってみる。
さらに、視覚的情報が自分の感情と上手く結びついていなくて言葉にできない子には、
認知を発達させるために、「どう感じた?」と自分の気持ちに焦点を当てるような問いを意図的に増やしてみる。
このように、私たち保育士が子どもたちを発達障がいと判断してしまう前に、できることはまだまだたくさんあります。
人は、情報をインプットし、それをアウトプットすることで、成長していきます。
コロナ禍になりYoutubeなどが一気に普及しましたが、インプットの一方通行で、
そこで学んだことや知ったことをアウトプットすることができないのが課題です。
一方で、保育園に来ると必ず人と関わるので、アウトプットする環境があるので、最後の砦だと思っています。
ですので、私たちは保育士として、
何を増やして、何を意識して子どもたちを育んでいくのかを考えて保育につなげていってほしいです。
また、5感を使った保育を行なって、5領域で物事を考える保育をおこなっていきましょう。
今回もご視聴ありがとうございました。